楽天家を建てよう

2013年1月更新

vol.12(最終回) 先々を見つめる家

この正月明けからちょっとした事情で一人暮らしをしている。愛犬エルはいるけれど、人間は僕一人(といっても妻に家出されたわけではありません。1月末には帰ってくる予定。念のため)。
昨年11月に娘が独立したせいでただでさえ家の中がスカスカしているのに、さらに一人減ってスッカンスッカンしている。2階にもほとんど行かなくなった。というより、行く必要がなくなった。家族がいる時は一人になれる時間を求めて2階の書斎に逃げ込んでいたけれど、今は1階のリビングにいても一人なのでわざわざ2階まで行って私的な時間をつくる必要がないのだ。

▲真ん中にソファが置かれたリビング

リビングのソファに座ってテレビを観ながら、ふと違和感を感じた。テレビ画面の向きに対してソファは直角に配され、リビングの端に置かれている。リビングの中心にオープンスペースをつくり人がすれ違いやすいようにした、新築のときからのレイアウトだ。この違和感は何なんだろう?しばらくテレビを観ていて、その理由がわかった。僕は今までテレビ画面を斜めから観ていたのだ。正面の方が観やすいし、姿勢だってラクだ。しかも僕は今一人だ。リビングの真ん中を空けておく必要もない。正面からテレビを観たい!という衝動にかられ、ソファを特等席ともいえる位置に移動した。座ってみると、これがとてもいい。さらにソファ以外の椅子2脚を2階に上げて空間に余裕をつくった。落ち着く。しっくりくる。

一人暮らしになって2階に行かなくなり、家具のレイアウトを変えたくなったのは、そのライフスタイルにふさわしい、住まいの広さや趣きというものがあるからではないだろうか。結婚して、子どもが生まれて、やがて子供たちは独立して家を離れていく。夫婦二人暮らしから、いずれ一人暮らしになる。家づくりを考えるとき、将来のライフスタイルの変化を見据えたプランづくりが大切なのだ。子どもたちが小さいうちは子供部屋をオープンスタイルにして、成長したら間仕切で個室にする。子どもが独立したら、子供部屋を夫婦それぞれの寝室にしてもいいし、一緒に趣味を楽しむアトリエにしてもいい。身体能力が低下することも考えて、階段の勾配を緩やかにするとか、段差を無くしたり、要所要所に手すりを設けておくことも必要だろう。

「ライフスタイルの変化にフレキシブルに対応する家づくり」が大切なことは知識としてはわかっていたけれど、一人暮らしを始めて実感してしまった。妻が帰ってくるまで自分好みに家の中をいろいろいじくって、一人暮らしを満喫しよう。でもなあ、それをまた元に戻すのも大変だから、そこそこにしておかないとなあ。また夫婦二人暮らしが始まれば、テレビ画面の向きに対してソファが直角に置かれたリビングが、しっくりと落ち着く場所になるのだと思う。

「楽天家を建てよう」を執筆させていただいてから、ちょうど一年。今回のコラムが最終回となりました。今読み返してみると、とりとめもないことが多く、そこまで書かなくてもよかったかなあと感じる部分もあり、反省しきりです。肩の力を抜いて家づくりを楽しんでほしいという想いで書き綴ってきましたが、少しでもお役に立てたのでしたら幸いです。
このコラム連載にあたっては、原稿締め切りが過ぎても我慢強く待っていただいた向上計画総合研究所のスタッフのみなさんにお世話になりました。ありがとうございました。

コピーライター  大坪 徹 コピーライター
大坪 徹

1956年生まれ、滝川市出身、札幌市在住。有限会社壱風堂 代表取締役。
コピーライターとして東京の広告代理店、広告制作会社などに15年間在籍。
日本航空、東京ディズニーランド、NTT、富士ゼロックス、三菱電機などの広告制作に携わる。その後、札幌にて広告代理店に勤務。1997年、壱風堂を設立。
カルビー「じゃがポックル」、劇団四季「ライオンキング」、NEXCO東日本の他、国内有数の不動産およびマンションデベロッパーのプロジェクト多数に携わる。

  • <主な受賞歴>
  • ・毎日広告デザイン賞 部門賞
  • ・消費者のためになった広告コンクール 最優秀賞
  • ・日本雑誌広告賞単色刷広告 銀賞
  • ・札幌コピーライターズクラブ SCC最高賞
  • ・札幌コピーライターズクラブ 眞木準コピー賞
  • ・日経ウィークリー広告賞 優秀賞 など